こんにちは!お茶の水美容形成クリニックでございます。
年齢を重ねるにつれて気になる目の下のクマ。特に50代以上の方にとって、その治療法は多岐にわたりますが、中でも「切開ハムラ(表ハムラ)」は、根本的な改善を目指せる有力な選択肢として知られています。しかし、「完璧な治療法」と安易に捉えるのは危険です。今回は、東大医学部卒の吉井医師の解説をもとに、50代以上の方に第一選択肢となることが多い切開ハムラに潜む特有のリスクと、賢い治療選択のポイントを深掘りしていきます。
切開ハムラ(表ハムラ)とは? その強力な効果とダウンタイム
切開ハムラ(表ハムラ)は、まつ毛の生え際を切開し、皮膚を伸ばしてクマを改善する手術方法です。目の周りの手術としては最も大掛かりな部類に入るとされています。
切開ハムラ(表ハムラ)のメリット
圧倒的な美的効果: シワ、目の下の突出(眼窩脂肪の出っ張り)、目の下のへこみを一気に良くすることができ、視覚的には最も効果が高いと評価されています。皮膚をピンと張ることで、若々しい印象を取り戻すことが期待できます。
一方で、この手術には「ダウンタイム」という大きな側面が伴います。
切開ハムラ(表ハムラ)特有のリスクと対処法
切開ハムラ(表ハムラ)には、以下のような特有のリスクが伴う可能性があります。しかし、適切な知識とクリニック選びによって、そのリスクを極力抑えることが可能です。
1. 内出血と腫れ
◦ 意外にも、裏ハムラや脱脂+脂肪注入といった他のクマ治療と比べて、内出血や腫れの程度はそれほど大きく変わらないことが多いとされています。
◦ 症状としては、頬の周りが少し黄色くなる程度で、女性であればメイクで、あるいはマスクを着用すれば目立たないレベルであることが多いです。
◦ 通常、1週間程度で治まり、抜糸も術後1週間で行われます。この点に関しては、過度に心配する必要はないとされています。
2. タレ目(外反)
◦ これが切開ハムラ(表ハムラ)で最も懸念されるリスクの一つです。皮膚を切開してピンと張るため、どうしても下方向にテンションがかかり、下まぶたが下に引っ張られてタレ目気味になることがあります。
◦ 発現時期とピーク: 術後2週間から1ヶ月程度で出現し、この時期にピークを迎えやすいとされています。
◦ クリニックでの工夫: 当院では、タレ目にならないよう、目尻の横側の骨に皮膚をやや吊り目気味に引っ張って固定する工夫を凝らしており、外反のリスクをかなり抑える努力をしています。
◦ 回復期間: 万が一外反が起こったとしても、術後1ヶ月から3ヶ月で大部分が元に戻り、3ヶ月から6ヶ月でほぼ元の状態に戻ることが多いです。これは、歯の矯正のように、気長に見守ることが重要とされています。
3. ドライアイと結膜下浮腫(白目のぷよぷよ)
◦ タレ目(外反)が発生した場合、目の表面積が広がるため、空気に触れる面積が増え、ドライアイになりやすくなることがあります。
◦ ドライアイに伴い、目がうるうるしたり、結膜下浮腫(白目の部分が水でぷよぷよと腫れる)が生じたりすることがあります。
◦ 結膜下浮腫は、下まぶたが強く引っ張られることで、白目の粘膜が圧迫されて水が溜まることでも起こります。
◦ 回復と早期処置: これらも外反が戻るにつれて自然に改善し、1ヶ月から3ヶ月のスパンで良くなることが多いです。しかし、術後1週間後の抜糸時や1ヶ月検診時に結膜下浮腫が見られる場合、非常に細い針で水抜きをすることで、早期に改善させることが可能です。こうした早め早めの処置によって、切開ハムラ(表ハムラ)特有のリスクを極力抑えることができます。
手術アプローチの違いと「中途半端な切開」の落とし穴
クリニックによっては、外反や結膜下浮腫のリスクを嫌い、裏ハムラのみを行うところや、切開ハムラ(表ハムラ)をするにしてもごくわずかな皮膚しか切除しないところもあります。しかし、これには注意が必要です。
• シワ改善効果の限界: 裏ハムラのみでは皮膚に何も触れないため、50代以上の方の場合、シワが残りやすいという問題があります。
• 「少ししか切らない」手術の弊害: 例えば、一般的なクリニックが3〜5mmの皮膚を切除するのに対し、1〜2mmしか切除しないような場合、一時的には張ったように感じられるかもしれません。しかし、これは物理的な切除と術後の腫れによるもので、1年程度の比較的短期間で再びシワが現れてくることが多いのです。
• 再手術のリスク: 再びシワが気になり、もう一度切開して引き上げようとすると、外反のリスクが格段に高まります。吉井医師は、「中途半端に少ししか皮膚を取らないのは、あまりよろしくない」と考えており、切開ハムラ(表ハムラ)を行うのであれば、しっかりと皮膚をピンと張った状態にすることが、長期にわたって肌のハリを保つために最も良い方法だと考えております。
手術後のケアとライフスタイルの重要性
手術はあくまで一時的な介入であり、加齢による変化は止まるものではありません。切開ハムラ(表ハムラ)で一時的にシワが改善されても、その後何もしなければ、時間の経過とともにシワは再び現れてきます。
• 美容皮膚科的治療の併用: 手術後も、タイトニングレーザー(HIFUやRF)、フラクショナルレーザーなどの美容皮膚科的治療を取り入れることが大切です。
• 日常生活習慣の見直し: タバコ、過度な飲酒、目をゴシゴシ擦る癖、睡眠不足といった生活習慣は、老化を加速させる要因となります。せっかく手術で得た効果を長持ちさせるためにも、年齢を重ねるほどこれらの習慣に気を配ることが重要です。
切開ハムラ(表ハムラ)以外の選択肢と「時期」の考慮
切開に伴うリスクやダウンタイムが怖いと感じる方には、脱脂+脂肪注入や裏ハムラが代替案として提案されることがあります。
• シワの残存: これらの皮膚を切らない方法では、どうしても多少のシワは残ることになります。
• 段階的アプローチの可能性: 現状でシワの程度に納得できたとしても、5年、10年後にシワが気になり始めた際に、改めて余剰皮膚切除(皮膚だけを切って引き上げる手術)十分にあり得ます。
しかし、後から皮膚切除を行う場合にも、年齢による制約があります。
• 高齢でのリスク増: 60代、70代、80代と年を重ねるにつれて、下まぶたの皮膚は非常に柔らかくなり、伸びやすくなります。そのような状態で皮膚を切開して引き上げると、外反のリスクが非常に高まるのです。
• 最適な時期: そのため、後から皮膚切除を検討するのであれば、50代から60代くらいが最も適した時期と考えられています。70代、80代の方の場合、皮膚の弾力性など個人の状態(実際に皮膚をつまんで強度を確認する診察)によって、適応が慎重に判断されます。
• 欧米の論文との違い: 「高齢になったらハムラはできない」とするクリニックもありますが、これは欧米(特に白人)の論文が根拠になっている場合があります。白人は日本人よりも皮膚や組織が柔らかく、若年層からシワができやすいため、若い段階で切開を行うことが多いです。そのため、日本人と白人では皮膚の硬さや状態が異なり、日本人であれば比較的高齢でも切開ハムラ(表ハムラ)が可能であると、吉井医師の多くの経験に基づき、患者様みなさまにご説明しております。
まとめ:あなたにとっての最適なクマ治療を
切開ハムラ(表ハムラ)は、シワ、目の下の突出、へこみを同時に改善できる、非常に効果の高いクマ治療法です。しかし、タレ目やドライアイ、結膜下浮腫といった特有のリスクとダウンタイムが存在することを理解することが重要です。
代替案として、リスクの少ない脱脂+脂肪注入や裏ハムラを選択し、将来的にシワが気になった時に皮膚切除を行うという段階的なアプローチも可能です。
最終的に、どの治療法を選択するかは、患者様ご自身の「どこまで改善したいか」という希望と、「どこまでのリスクを許容できるか」という考え方に基づいて、医師と十分に相談して決定すべきです。
クマ治療をご検討の方は、ぜひ一度、当院にご相談にお越しいただき、ご自身の状態に合わせた最適な治療法を見つけていただけますと嬉しく思います。