こんにちは!お茶の水美容形成クリニックでございます。
「目元のクマ、どうにかしたいけど、手術はちょっと…」50代、60代を迎える多くの方々がそう考えていらっしゃるのではないでしょうか。30代・40代だけでなく、多くの50代・60代の患者様がクマ治療について関心を寄せています。
この年代のクマには、いくつかの特徴があります。 まず、シワや皮膚のたるみが顕著になること。 そして、20代・30代の方が軽度のクマでも気にされるのに対し、50代・60代では中等度以上の眼窩脂肪(目の下の脂肪)の突出が見られることがほとんどです。 さらに、目の下の脂肪の突出だけでなく、頬のボリュームロス(こけ)もクマを目立たせる要因となります。頬のたるみ(ブルドッグのような状態)がほうれい線の上に乗り、目の下の脂肪の突出と頬のへこみがコントラストを生み、クマが強調されて見えてしまうのです。
通常、この年代の方には皮膚のたるみまでピンと伸ばす「切開ハムラ法」をベースとした治療を推奨していますが、「切る」ことに抵抗を感じる方も少なくありません。そこで今回は、50代・60代の方々が「切らずにできる」クマ治療の選択肢と、それぞれのメリット・デメリット、そして現実的な効果について、当院統括医師の吉井健吾医師が詳しく解説します。
「切らない」クマ治療の主な選択肢とその限界
「切らない」治療と聞くと、負担が少なく、手軽に受けられるイメージがあるかもしれませんが、実際には様々な限界があり、場合によってはかえって費用がかさむ、不自然になる、といったケースもあります。
クマ取り注射:安易に飛びつくのは危険!
最近、広告で「クマ取り注射」という言葉を目にすることがあるかもしれません。これは以前流行した「脂肪吸引注射」と同様に、「手術は嫌だけど注射なら」という心理に訴えかけるネーミングで登場しました。
しかし、その中身には注意が必要です。成分としてFGF(線維芽細胞増殖因子)が含まれているケースがあり、FGFは使い方を誤ると「しこり」になる原因となります。適切な量、適切な管理、そして長期的な経過観察が必須な非常に繊細な薬剤です。しかし、残念ながら、そうした繊細な治療を広告で大々的に打ち出すような大手クリニックでは、適切なアフターフォローが期待できないことも少なくありません。
考えられる結末としては、「あまり効果を感じない」か「しこりになってしまった」というケースが多く、安易に飛びつくことは避けるべきです。怪しいネーミングの治療には注意が必要です。
レーザー治療「モフィウス」:軽度なシワ・たるみに限定的
最近注目されている治療法に「モフィウス」のようなレーザー治療があります。これはニードルRFと呼ばれるもので、針を刺してその先端から熱を出し、皮膚を引き締める治療です。当院で導入しているポテンツァよりも針が深く届き、より強い熱を与えられるとされています。
ある程度の効果は認められており、目元の小ジワだけでなく口元のたるみなどにも効果があると言われています。軽度のシワやたるみであれば、モフィウスを数回行うことで改善する可能性はあります。
しかし、50代・60代の方に多い中等度から重度のシワ・たるみや、突出した眼窩脂肪に対しては、モフィウスの効果は限定的です。何度も治療が必要になり、費用もかさむ上に、針を深く刺して熱を与えるため痛みも伴います。結果として、手術の方が楽だった、という結論になりやすい傾向があります。
現状では、クマ治療において皮膚科的なレーザー治療で全てをカバーするには「まだ時代が早い」というのが正直なところです。手術の方が変化が分かりやすく、費用対効果が高いと言えるでしょう。
注入治療:ヒアルロン酸とベビーコラーゲン
注入治療にはヒアルロン酸とベビーコラーゲンがあります。
- 【ヒアルロン酸】頬のこけに対してヒアルロン酸を注入するのは自然な仕上がりになりやすいですが、目の下の脂肪が突出している部分に対してヒアルロン酸で溝を埋めようとすると、非常に限界があります。脂肪の出っ張りに合わせて滑らかになるように注入しようとすると、かえって目元が「もこっ」と不自然に膨らんで見えやすくなります。 さらに、ヒアルロン酸には水を吸収する性質があり、長期間留まっているとスポンジのように水を吸って膨らみ、「ぶよつき」の原因となることがあります。半年ごとに新しいものに入れ替える必要があるため、デリケートな目元に頻繁に注入することは、費用面でもリスク面でも現実的ではないでしょう。
- 【ベビーコラーゲン】短期間・高コスト、特定のシワに有効 ベビーコラーゲンは50代・60代の方の場合、主に2通りの使い方があります。
- ①クマの溝(ティアトラフ)のへこみに浅く注入する
- 自然な仕上がりになりやすいですが、持続期間が約3ヶ月と短めです。当院では1本あたり11万円程度と高価であるため、3ヶ月ごとに注入し続けるのは費用的に厳しいと感じる方が多いかもしれません。
- ②目尻の小ジワ(カラスの足跡)やちりめんジワに対して、皮膚の浅い層に細かく注入する
- これはベビーコラーゲンにしかできない治療であり、特定の小ジワに対しては有効な選択肢となり得ます。
しかし、突出した目の下の脂肪そのものにベビーコラーゲンで対処することは困難です。
これらの非手術的な治療は、いずれも限界があるか、何度も治療が必要になる、効果が限定的である、あるいは不自然になりやすいといった問題点があります。結果として「切らない」ことで、かえって時間や費用がかさみ、手術で一発で解決するよりも負担になることもあるのです。
「切らない手術」の選択肢:本質的な改善を目指すなら
根本的なクマの改善を目指すのであれば、やはり手術が選択肢になります。しかし、「切る」ことに抵抗がある方のために、「切らない手術」も存在します。
脱脂(脂肪除去)だけ:50代以上には非推奨
クマの原因となる眼窩脂肪の突出に対して、単純に脂肪だけを除去する「脱脂」という手術があります。しかし、50代以上の方には脱脂だけを行うことは避けた方が良いとされています。
年齢を重ねるにつれて、目の下の支持組織が緩み、弱くなってきます。若い頃はしっかりしているこの組織が緩むと、脱脂で脂肪を完全に除去してしまうと、目が落ちくぼんだり、目の上がくぼんだりするリスクが高まるためです。稀なケースではありますが、年齢が上がるにつれてこのリスクも上昇するため、この年代での脱脂単独治療は推奨されません。
脱脂+脂肪注入:50代・60代に相性の良い治療
「切開ハムラ法は嫌だけど、クマをしっかり治したい」という方にとって、当院が2番目の選択肢として推奨することが多いのが、「脱脂と脂肪注入」の組み合わせです。
この治療は、目の下の突出した脂肪を除去し、同時にくぼんでしまった部分や頬のボリュームロスに対して、ご自身の脂肪を注入するものです。
- 【頬のこけ対策に有効】50代・60代の方には頬のこけがある方が多いため、脂肪注入でその部分を埋めることで、目の下のクマとのコントラストが緩和され、顔全体の印象が若々しくなります。
- 【小ジワ対策にも】目元の皮膚のすぐ下に脂肪を薄く注入することで、肌にハリが出て、小ジワの改善にもつながります。
- 【脂肪の定着率が良い傾向】意外なことに、50代以上の方では脂肪の定着率が高い傾向にあります。本来、年齢が上がるほど注入した脂肪は減りやすいと考えられがちですが、皮膚の柔らかさやハリがちょうど良い状態になるため、脂肪がくっつきやすくなるのです。
症例を見ても、60代の方で脱脂と脂肪注入を行った結果、非常に滑らかに仕上がり、小ジワも目立たなくなったケースがあります。中には、1回の注入で定着が不十分だったため2回目の注入を行い、さらに目元が滑らかになったケースも報告されています。
裏ハムラ法:脂肪注入を伴わない「切らないハムラ」
裏ハムラ法は、まつ毛の生え際を切開せず、まぶたの裏側から手術を行うハムラ法です。脂肪の定着率に左右されないため、術後1ヶ月の時点で比較的安定した状態になるのが特徴です。
- 【メリット】皮膚を切開しないため、ダウンタイムが短く、表面に傷が残りません。
- 【デメリット・適応】切開ハムラ法と比較すると、小ジワが多少残ることがあります。そのため、50代以上の方で裏ハムラ法が適しているのは、皮膚のハリがかなりある方に限られると考えられます。
- 【脱脂+脂肪注入との使い分け】
まとめ
50代・60代以上の方で「切らない」クマ治療を検討する際、クマ取り注射やレーザー治療、ヒアルロン酸やベビーコラーゲンといった注入治療は、残念ながら効果が限定的であったり、不自然な仕上がりになったり、何度も治療が必要でかえって高額になるといった限界があるのが現状です。
本当に根本的な改善を目指し、持続的な効果を求めるのであれば、「脱脂+脂肪注入」や「裏ハムラ法」といった「切らない手術」の選択肢が有力です。特に「脱脂+脂肪注入」は、50代・60代に多い頬のこけや小ジワにも対応でき、脂肪の定着も期待できるため、非常に相性の良い治療と言えるでしょう。
当院では、患者様一人ひとりのクマの状態やご希望に応じて、切開ハムラ法はもちろん、脱脂+脂肪注入、裏ハムラ法など、幅広い選択肢の中から最適な治療法をご提案しています。まずはご自身のクマの状態を正確に診断し、どの治療が最も適しているのか、ご相談いただくことが大切です。
詳しくはこちらをご覧ください:https://www.ochanomizubiyou.com/surgery/kuma.html