こんにちは!お茶の水美容形成クリニックでございます。最近、SNSなどでクマ治療に関する情報が飛び交い、それに伴い麻酔の安全性や種類についても関心が高まっています。特に「全身麻酔で脳に影響が出るのでは?」といった懸念の声も聞かれる中、クマ治療においてどのような麻酔が適切で、患者さんにとって最も負担が少ないのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。この記事では、美容医療で用いられる麻酔の種類と特徴を分かりやすく解説し、特にクマ治療における適切な麻酔の選び方、そしてその際のクリニック選びのポイントについて詳しくお話しします。
麻酔の種類とその特徴
美容医療で一般的に使用される麻酔は、大きく分けて以下の4種類があると考えられています。
1. 局所麻酔(きょくしょますい)
◦ 特徴: 最もオーソドックスな麻酔方法で、注射によって手術部位の感覚を麻痺させます。痛みを感じるのは注射の瞬間だけで、その後はしびれたような状態になります。皮膚科クリニックでのホクロ除去などでも行われる、非常にシンプルな麻酔です。
◦ 適応: 二重埋没やホクロ除去など、比較的小規模な手術によく用いられます。全身麻酔や静脈麻酔を行う場合でも、手術部位には痛みの刺激反応を抑えるために局所麻酔を併用することがほとんどです。患者さんが痛みに反応して動いたり、全身麻酔時でも血圧が上がったりすることを防ぐ目的があります。
◦ クマ治療での位置づけ: 小さな脱脂などであれば不可能ではありませんが、目の奥の脂肪を扱うクマ治療においては、局所麻酔だけでは鈍い痛みや頭痛のような不快感が生じる可能性があり、患者さんにとって精神的・身体的な負担が大きくなることがあります。
2. 笑気麻酔(しょうきますい)
◦ 特徴: 鼻や口からガスを吸入することで、心地よくふわっとした状態になる麻酔です。意識はありますが、リラックスした気分になり、中にはほとんど寝てしまう方もいらっしゃいます。手術部位には局所麻酔も併用されます。笑気麻酔は意識がある状態での麻酔に分類されます。
◦ 適応: 比較的小さな手術や、施術中の音や感触が怖いと感じる場合に便利です。例えば、フェイスリフトや糸リフトのように耳の近くで行われる手術で、糸を入れる際の音が気になる場合や、広範囲にわたって注射の麻酔を打つ際に起きている状態では怖いと感じる場合などに用いられます。
◦ クマ治療での位置づけ: 局所麻酔と同様に、意識がある状態での施術となるため、鈍い痛みや不快感を感じる可能性があります。手術時間が長くなるハムラ法(約40分〜90分)などでは、ずっと起きている状態だと患者さんの心理的・肉体的な負担が大きくなる傾向があります。笑気麻酔を使用する際は、念のため指先に酸素濃度を測る「サチュレーションモニター」を装着することが推奨されます。
3. 静脈麻酔(じょうみゃくますい)
◦ 特徴: 点滴から麻酔薬を注入し、眠ったような状態にする麻酔です。患者さんは手術中に「寝ていて、起きたら手術が終わっている」という感覚になるため、患者さんの視点からは非常に楽な方法と言えます。夜中の睡眠と同じように、ちょっとした刺激では寝ていられますが、強い痛み刺激があれば反応して動いてしまう可能性があるため、手術部位には局所麻酔を併用します。点滴で入れる薬剤の種類や濃度は、クリニックによって少しずつ変わってきます。
◦ 適応: クマ治療はもちろん、フェイスリフトや脂肪吸引など、より深い手術にも対応できるため、美容クリニックの提供できる手術の幅を大きく広げる麻酔です。静脈麻酔ができるかできないかで、クリニックの手術の幅は格段に変わると一般的に言われています。
◦ クマ治療での位置づけ: 多くのクリニックでクマ治療に用いられており、患者さんの負担を最も軽減できる麻酔方法の一つと考えられています。SNSで全身麻酔との比較が話題になることもありますが、クマ治療においては基本的に静脈麻酔で十分であり、過度な心配は不要とされています。
4. 全身麻酔(ぜんしんますい)
◦ 特徴: 点滴からの麻酔薬に加え、必要に応じて筋弛緩薬(筋肉の動きを止める薬)を使用し、呼吸も停止させる麻酔です。患者さんは痛み刺激に全く反応しない状態となり、気管にチューブを挿入し人工呼吸器で呼吸を管理します(気管挿管)。麻酔科医が常駐する必要があるため、全身麻酔を導入している美容クリニックはかなり限られています。静脈麻酔と全身麻酔は使っている薬剤が同じこともありますが、麻酔の濃度を深くしていくことで、呼吸が止まったり痛み刺激に反応しなくなる状態が全身麻酔となります。
◦ 適応: 骨切り手術、肋骨軟骨を使用した鼻の手術など、非常に高度で侵襲の大きい、ほとんど全ての美容外科手術が可能になります。
◦ クマ治療での位置づけ: クマ治療では、骨を大きく操作することは稀であり、呼吸を止めてまで行う必要がないため、基本的に全身麻酔は使用しません。唯一の例外として、骨膜下ミッドフェイスリフトのように広範囲にわたる剥離を伴い、患者さんへの刺激が非常に大きい場合に全身麻酔が選択肢となることがありますが、それでも多くの場合は静脈麻酔で対応可能です。全身麻酔は術後、喉の痛みや尿道カテーテルによる不快感など、静脈麻酔に比べて患者さんの負担が大きくなる傾向があります。覚醒にも静脈麻酔より時間がかかる傾向にあります。
クマ治療における麻酔の選択:なぜ静脈麻酔が推奨されるのか
クマ治療において、患者さんにとって最も快適で安全な麻酔は静脈麻酔であると考える医師が多いです。その主な理由は以下の通りです。
• 患者さんの負担軽減: 静脈麻酔は、患者さんが眠っている間に手術が完了するため、「起きたら終わっていた」という感覚で、心理的・身体的負担を大幅に軽減できます。局所麻酔や笑気麻酔では、目の奥の脂肪を扱う際の鈍い痛みや、手術中の音、長時間起きていることによる疲労など、患者さんにとってつらい要素が少なくありません。
• 恐怖心やトラウマの防止: 特に美容医療では、一度怖い思いをすると、再手術が必要になった際に大きなトラウマとなり、治療に踏み切れなくなることがあります。静脈麻酔で快適に手術を終えることで、そのような恐怖心を防ぎ、もし将来的に再治療が必要になっても安心して受けられる状態を保つことができます。
ただし、静脈麻酔のかけ方はクリニックや医師によって異なる場合がある点には注意が必要です。麻酔が浅すぎると、手術中に患者さんが痛み刺激に反応して起きてしまうリスクがあります。経験豊富な医師であれば、患者さんが最も深く意識を失っている時に麻酔を全部行う、あるいは痛みで顔が動いてきたら都度局所麻酔を追加するといった形で、麻酔の深さを適切に管理します。
静脈麻酔のリスクと呼吸管理の重要性
静脈麻酔の安全性について語る上で、最も重要なのが「呼吸管理」です。静脈麻酔は、酔っぱらって寝ている状態に似ており、無意識のうちに舌が喉の奥に落ち込んで気道が狭まり、呼吸が止まってしまうリスクがあります。これは、酔っぱらった人が寝ている間に呼吸が止まってしまうことがあるのと同様の状態です。特に以下のような特徴を持つ患者さんは、気道が狭くなりやすい傾向があります。
• 顎が小さい方
• 顎下に多くの脂肪がついている方
• 全身の体格として若干肥満傾向にある方
• ご高齢の方
このようなリスク因子を持つ患者さんに対しては、麻酔がかかってから「エアウェイ」と呼ばれる気道確保器具を鼻や口から挿入したり、顎を上向きに上げて気道を確保したりといった工夫が不可欠です。
経験豊富な医師であれば、手術中に患者さんの呼吸状態を常に監視し、少しでも異変があれば即座に対応することができます。例えば、呼吸が苦しそうであれば顎の位置を調整するなどの処置を行います。クリニック選びの際は、単に静脈麻酔が可能かどうかだけでなく、こうした呼吸管理への意識や体制が整っているかどうかも重要なポイントとなります。
麻酔の選択に関する医師やクリニックの方針の違い
麻酔の選択は、医師の考え方やクリニックの設備によっても様々です。
• 患者さんの快適性を最優先: Dr.吉井のように、「患者さんにとって一番楽なやり方が一番良い」と考え、クマ治療では静脈麻酔を強く推奨する医師もいます。これは、一度怖い思いをするとトラウマになり、再手術が必要になった際に踏み切れなくなるのを防ぎたいという思いがあるためです。
• 麻酔のリスクを懸念: 一方で、「麻酔による呼吸停止の可能性というリスクを極力排除したい」という理由から、局所麻酔で十分な手術には局所麻酔のみを用い、それが不可能な場合は静脈麻酔を飛ばして全身麻酔を選ぶという、極端な方針を持つ医師もいるかもしれません。
• クリニックの設備状況: 静脈麻酔を実施するための設備や、麻酔管理の経験が不足しているクリニックでは、「局所麻酔や笑気麻酔で行える」と説明されるケースもあるかもしれません。
このように、医師やクリニックによって麻酔に対する考え方や対応は異なります。以前に他のクリニックで静脈麻酔を受けた際に「途中で目が覚めてしまった」といった経験があり、静脈麻酔に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、それは麻酔のかけ方や使用薬剤の濃度がクリニックによって異なるためです。しっかりとした経験と知識を持つクリニックであれば、クマ治療では「寝ている状態でできる」と安心して考えて良いでしょう。
安心してクマ治療を受けるためのポイント
1. 麻酔の種類とリスクについて理解を深める: 自分の受ける手術にどのような麻酔が適しているのか、それぞれのメリット・デメリット、リスクについて事前にしっかり確認しましょう。特にSNSなどで話題になっている麻酔に関する情報に触れた場合は、その背景にある医療的な見解も確認することが大切です。
2. クリニックの麻酔管理体制を確認する: 静脈麻酔を受ける場合は、呼吸管理に対する意識や、リスク因子のある患者さんへの対応策(エアウェイ使用など)がしっかりしているかを確認することが重要です。術者自身が呼吸状態をしっかり見ることができる状態であるかも確認すべきポイントです。
3. 医師の考え方を聞く: 麻酔に対する医師の考え方や、なぜその麻酔を推奨するのかについて、カウンセリングで納得いくまで質問しましょう。患者さんの快適性を重視するのか、リスク排除を最優先するのか、医師によってアプローチは異なります。
4. 過去の経験を伝える: 以前に麻酔で不快な経験がある場合は、そのことを正直に医師に伝え、具体的な対策について相談しましょう。例えば、他のクリニックで静脈麻酔中に起きてしまった経験がある場合でも、現在のクリニックでは「かなりしっかり麻酔をかける」といった説明を受けることで、安心して治療に臨める可能性があります。
まとめ
クマ治療における麻酔は、患者さんの負担を最小限に抑え、快適に手術を受けていただく上で非常に重要な要素です。多くの医師が、クマ治療には静脈麻酔が最も適していると考えており、患者さんが寝ている間に手術を終えることで、肉体的・精神的なストレスを軽減し、将来的な再治療への心理的ハードルも下げることができます。
麻酔には種類ごとに特徴とリスクがありますが、適切な呼吸管理と経験豊富な医師による施術であれば、安心して静脈麻酔を受けることが可能です。クリニックや医師によって麻酔へのアプローチは様々ですので、ご自身の希望や体質を伝え、納得のいく麻酔方法を選択できるクリニックと医師を見つけることが、クマ治療を成功させる鍵となるでしょう。
クマ治療についてはこちら:https://www.ochanomizubiyou.com/surgery/kuma.html