裏ハムラ修正が激増!その背景と真実とは?
私自身、かなり前からこの状況について言及してきましたが、これは決して特殊なことではありません。どんな手術でも、その施術を受ける患者さんの母数が増えれば、一定の確率でどうしても修正が必要なケースが出てくるものです。さらに、裏ハムラは手数が多い、つまり複雑な手術であるため、どこかの作業工程でわずかな狂いが生じたり、あるいは個人差に対応しきれなかったりすると、仕上がりに狂いが生じ、修正が必要になる可能性が高まります。単純に考えても、脱脂や脱脂と脂肪注入といったシンプルな手術に比べれば、複雑な分だけ修正のリスクは上がるのではないかと、個人的には考えています。
裏ハムラが広く世の中に普及すればするほど、多くの医師がこの手術を手掛けるようになりますが、医師の技量には当然ながら幅があります。そのため、このような複雑な手術においては、修正の確率が高まってしまうという側面も無視できません。また、操作が複雑になればなるほど、重いリスクが発生する確率も上がると考えられています。
今回は、この裏ハムラ修正の増加がなぜ起きているのか、具体的にどのようなお悩みが報告されているのか、そしてそれに対してどのような修正が必要になるのかを、詳しく解説していきます。
おさらい:裏ハムラとは、どんな手術?
この手術の最大の特徴は、目の表面に傷を作らずに、まぶたの裏側(結膜側)からアプローチする点です。そのため、表から見える場所に傷跡が残る心配はありません。
1. 結膜を切開: まぶたの裏側の粘膜を切開します。
2. 眼窩脂肪(がんかしぼう)の発見と移動: クマの原因となる眼窩脂肪を見つけ出します。この脂肪は「眼窩隔膜」というミカンの皮のような膜に包まれていますが、その膜を切開して脂肪を引き出します。脂肪の処理についてはクリニックによって異なり、全く取らない場合もあれば、少し取る場合もあります。
3. 靭帯(じんたい)の剥離: 目の下のへこみの原因となる眼輪筋靭帯を見つけ出し、剥がします。この靭帯は、皮膚のすぐ下から骨まで食い込んでいる「お肉の筋」のようなもので、ほうれい線も同様の構造です。この剥離によって、へこみを解消することを目指します。
4. 脂肪の再配置と固定: 剥離した靭帯の上に、この眼窩脂肪を移動させて骨の縁を越えた向こう側まで固定します。これにより、脂肪の膨らみでへこみを埋め、靭帯が再癒着するのを防ぐことで、目の下の段差を滑らかにするという考え方で行われます。
「脱脂」が脂肪を「除去」するのに対し、裏ハムラは脂肪を「移動」させるため、脱脂に比べてへこみがなだらかになる傾向がある、というのが最大の強みであり、セールスポイントでした。手術時間は、早い医師で40分前後、じっくり行う医師でも80~90分程度で完了します。
ただし、裏ハムラの「定義」や「どこまで行ったら裏ハムラと呼ぶか」については、クリニックによってまちまちであるのが現状です。例えば、移動させる脂肪の位置や固定する箇所(内側、真ん中、外側全て、または一部のみ)なども、クリニックや患者さんの状態によって大きく異なります。
なぜ今、裏ハムラ修正が急増しているのか?
1. 手術の複雑性: 裏ハムラは、脱脂単体や脱脂と脂肪注入に比べ、手数が多く、構造的にも複雑な手術です。複雑な手術であるほど、どこかの工程でわずかな狂いが生じたり、個人差に対応しきれなかったりすると、仕上がりに不満が生じ、修正が必要になる可能性が高まります。
2. ドクターの技術差: 裏ハムラが広く普及するにつれて、多くの医師が手術を行うようになりました。しかし、複雑な手術であるからこそ、医師の技術や経験の差が、結果に大きく影響します。
3. 過剰な期待値: 裏ハムラが売り出された当初、「クマ治療の上位互換」「何でも解決する魔法のような治療」といった極論的な謳い文句でアピールされた結果、治療を受けた患者さんの期待値やハードルがものすごい勢いで上がってしまった側面があります。そのため、わずかな不満でも「期待外れ」と感じてしまうことがあります。
4. 歴史の繰り返し: 実は、かつて脱脂や脱脂と脂肪注入が流行した際にも、同様の悩み(変わり映えしない、シワが気になる、へこみが気になる)が指摘され、修正のニーズが高まりました。裏ハムラも、その「繰り返し」の中にいると言えるでしょう。
裏ハムラ後に生じる主な悩みと、その原因
現在、裏ハムラ後に修正を検討される方が抱える悩みはょ、大きく分けて以下の3つに集約されます。
1. 「変わり映えしない」「再発した」
「せっかく裏ハムラを受けたのに、術前とほとんど変わらない」「一度良くなったのに、またクマが出てきた」というお悩みです。
原因として考えられること:
• 手術操作が不十分: 本来、目の下のへこみを解消するためには、眼窩脂肪を眼輪筋靭帯を越えて、骨の縁の向こう側までしっかりと移動・固定する必要があります。しかし、実際には脂肪の移動が甘かったり、靭帯すら十分に剥離していなかったりすると、へこみがそのまま残ってしまい、効果を実感できないことがあります。
• 固定が弱い・外れてしまった: 適切に脂肪を移動・固定しても、固定が緩かったり、術後に患者さんが目をこすってしまったりすることで、固定していた糸が緩み、脂肪が元の位置に戻ってしまう(再発)こともあり得ます。
• 実際は脱脂のみだった: 残念ながら、裏ハムラと説明されたにもかかわらず、実際は単純な脱脂術しか行われていなかった、という「論外」なケースも報告されています。この場合、当然ながら裏ハムラの効果は得られません。
2. 「シワが気になる」
「裏ハムラを受けたら、かえって目の下にシワが増えたように感じる」というお悩みです。
原因として考えられること:
• 目元の構造上の変化: 脱脂、脱脂と脂肪注入、裏ハムラ、いずれの方法でも、目の下の膨らみ(眼窩脂肪)が解消されると、目元は多少なりともへこみます。へこむことで皮膚が余り、シワができるのは避けられない側面があります。特に30代、40代、50代と年齢を重ねるにつれて、皮膚の弾力性が低下している場合、そのシワが目立ちやすくなります。
• 期待値のミスマッチ: 「裏ハムラでクマの悩みは全て解決する」という過度な期待を抱いていた場合、術後にわずかなシワが生じただけでも、「裏ハムラであんなに高いお金を出したのに、こんなところにシワができている」と不満を感じやすくなります。ある程度のシワは年齢相応として許容できる範囲かどうかが、患者さんの満足度に大きく影響します。
対処法:
• 軽度なシワ: ちりめんジワのような細かいシワであれば、フラクショナルレーザーやハイフシャワーといったレーザー治療を繰り返し行うことで、改善が期待できます。傷が完全に落ち着く術後3~6ヶ月以降に検討するのが一般的です。
• 深く刻まれたシワ: レーザー治療では改善が難しい、深く刻まれたシワには、余剰皮膚切除(皮膚を切除して引き伸ばす)といった手術が有効な場合があります。
3. 「へこみが気になる」
「裏ハムラの強みはへこまないことだと聞いていたのに、目の下がへこんでしまった」という、裏ハムラの最大のセールスポイントと矛盾するお悩みです。
原因として考えられること:
• 実質的に脱脂に近かった: 裏ハムラと説明されていても、実際には脂肪の移動量が少なかったり、取る脂肪の量が多かったりすると、実質的には脱脂術に近い効果となり、へこみが生じやすくなります。これは、Instagramなどで症例写真を見ていると、一部のクリニックで裏ハムラと言いながらも、脱脂に近い状態になっているケースがあることが分かると言われています。
• 術後のむくみ: 術後2ヶ月程度は、固定した脂肪の周囲がむくむことがあります。このむくみがある間は、目の下の頬全体が少し前に出ているように見え、そのすぐ下がへこんで見えることがあります。通常、3ヶ月ほどでむくみが治まれば、へこみも改善されることが多いです。
• 元々の顔の骨格や組織の特性: 元々、目のすぐ下の骨の縁が前に出ている方や、頬の中央部分が膨らみがちな方の場合、裏ハムラで目の下が盛り上がったとしても、相対的にその下の部分がへこんで見え、コントラストが際立ってしまうことがあります。
• 組織の脆弱性: 50代以上の患者さんで、組織が非常に脆弱な場合、脂肪を移動させて隔膜をピンと張った際に、へこみが強く出てしまう可能性も指摘されています(これは個人的な経験に基づく推測ですが)。
稀なケースとして報告されるリスク
非常に稀なケースですが、目の動きに関わる「下斜筋」という筋肉を傷つけてしまい、物が二重に見える「複視」が生じるリスクも報告されています。操作が複雑な手術であるほど、このような重いリスクの確率も上がる可能性があります.
修正手術の選択肢と裏ハムラの今後
裏ハムラ後の修正は可能ですが、手術から半年程度経過している場合、組織が硬く癒着していることが多く、再手術の難易度は高まります。修正においては、症状に応じて以下のような治療が選択されることが多いです。
• 変わり映えしない・再発: 残っている脂肪があれば脱脂を追加したり、脂肪注入を組み合わせたりします。
• へこみが気になる: 脂肪注入や、ベビーコラーゲンなどの他の注入治療を行います。
• シワが気になる: 前述の通り、細かいシワにはレーザー治療、深く刻まれたシワには余剰皮膚切除が検討されます。
結局のところ、裏ハムラの修正は、これまで脱脂や脱脂と脂肪注入の修正で行われてきた方法と、大きくは変わらない印象です。これは、どんな治療にも「限界」があり、裏ハムラもその例外ではないことを示唆しています。
裏ハムラは、今まさにその真価が問われる分岐点に立たされています。今後、後遺症やリスクがどれだけ解決できるか、修正が容易で効果的なのかによって、クマ治療の主流として定着するのか、あるいは廃れていくのかが決まってくるでしょう。