今回は、美容医療の中でも特にデリケートな部位である「目の下」へのヒアルロン酸注入について、皆さんが抱いているであろう疑問や不安に徹底的にお答えしていきたいと思います。SNSやYouTubeでは「目の下にヒアルロン酸は絶対ダメ!」といった強い言葉を目にすることも多いですが、実際はどうなのでしょうか?当院の見解と、リスク、そして適切な使い方について詳しく解説していきます。
目の下のヒアルロン酸注入、当院では頻度が少ない理由
まず結論から申し上げますと、当院では目の下へのヒアルロン酸注入の頻度は、他の注入治療に比べて少ない傾向にあります。もちろん、全く行わないわけではなく、ケースバイケースで必要に応じて使用しています。では、なぜ当院ではヒアルロン酸の頻度が少ないのでしょうか?それにはいくつかの理由があります。
1. チンダル現象による不自然な色合いのリスク
ヒアルロン酸は「透明」な製剤です。皮膚のすぐ下に透明なヒアルロン酸を注入すると、「チンダル現象」と呼ばれる現象が起こり、皮膚から筋肉の赤い色が透けて見え、青白く不自然な色合いになりやすいというリスクがあります。これは、透明なものを浅いところに注入するがゆえの特性であり、仕上がりの不自然さにつながることがあります。
2. 水分吸収による「ぶよぶよ」感のリスク
ヒアルロン酸は水分を吸収する性質があります。注入後、時間とともに水分を吸収して膨らみ、「ぶよぶよ」とした風船のような不自然な膨らみになることがあります。特に目の下は皮膚が薄くデリケートなため、この変化が目立ちやすい傾向があります。もしこのような状態になった場合は、一度ヒアルロン酸を溶かす処置が必要になります。
3. 持続期間の短さと「流れやすさ」
目の下に注入した場合、ヒアルロン酸の持続期間は比較的短く、約3ヶ月から6ヶ月程度で入れ替えが必要になることがあります。また、ヒアルロン酸は「流れやすい」という特性もあり、注入した部位からわずかに移動してしまう可能性も指摘されています。
これらの特性から、当院では目の下へのヒアルロン酸注入は「癖が強い」製剤であると考えており、適応が限られるため、頻度が少ないのです。
当院が目の下への注入で「最も綺麗に馴染む」と考える治療法
では、当院で目の下に対して最も多く行っている、そして最も綺麗に馴染むと考えている治療法は何でしょうか?それは、主に以下の3つです。
1. 脂肪注入
当院が最も頻繁に行っているのは「脂肪注入」です。
• 最大のメリットは「仕上がりの自然さ」です。脂肪注入は、他のどの製剤よりも自然に馴染み、最も綺麗に仕上がると実感しています。
• 自身の脂肪を使うため、拒否反応が起こりにくいという利点もあります。
• 青クマの改善にも効果的です。青クマは筋肉の色が皮膚から透けて見えることで生じますが、脂肪(黄色い色)を皮膚と筋肉の間に細かく注入することで、筋肉の赤い色を遮断し、色合いを改善することができます。
• ヒアルロン酸と異なり、一度定着した脂肪は長期的にその効果が持続します。吸収される部分もありますが、定着した部分は半永久的に残ります。
ただし、脂肪注入にもデメリットがないわけではありません。
• 脂肪注入の定着率には個人差があります。年齢を重ねた方や喫煙者の方、目をこする癖がある方などは、注入した脂肪が定着しにくい傾向があります。
• 注入した脂肪は圧力に弱いため、術後に目を強く押したりこすったりすると、減少しやすくなることがあります。
• 手軽さの点では、ヒアルロン酸よりも外科的な処置となるため、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
2. ベビーコラーゲン・エランセ
ヒアルロン酸以外の製剤として、当院ではベビーコラーゲンやエランセといった製剤も使用しています。
• これらの製剤は「白色」であるという特徴があります。白色の製剤は、脂肪注入と同じように、筋肉の赤い色を白色で遮断してくれるため、目の下に入れても馴染みやすく、色合いも改善しやすいというメリットがあります。
• ベビーコラーゲンは、持続期間が1~3ヶ月程度と短いですが、昔からある製剤で安全性が高く、選択される方も多いです。
• エランセは、2~3年と持続期間が長いのが特徴ですが、腫れやすかったり、異物反応を起こしやすかったり、大量に入れるとしこりになりやすかったりと、「癖の強い製剤」という側面もあります。
それでもヒアルロン酸を使うのはどんな時?当院の「ケースバイケース」な使い方
ここまでヒアルロン酸のデメリットや、他の製剤のメリットを説明してきましたが、冒頭でもお伝えした通り、当院でもヒアルロン酸を全く使わないわけではありません。美容皮膚科のクリニックでは、外科的な治療を行っていない場合、目の周りの注入剤としてヒアルロン酸の使用頻度が高くなる傾向があります。
当院が目の下へのヒアルロン酸注入を検討するのは、主に以下のようなケースです。
• 「手軽さ」を重視する方:ヒアルロン酸は、「手軽に戻せる」という最大のメリットがあります。もし仕上がりが気に入らなかった場合でも、専用の溶解剤を注入すれば1日程度で溶かすことができるため、「お試し」感覚で注入を希望される方には適しています。外科的な処置に抵抗がある方にも選択肢となります。
• 脂肪注入の定着が悪い方:脂肪注入は非常に良い治療法ですが、体質的に脂肪が定着しにくい方(高齢の方、喫煙者の方、目をこする癖がある方など)もいらっしゃいます。このような場合の選択肢として、ヒアルロン酸注入が検討されます。
• 微調整や少量注入:大幅な改善ではなく、「微調整」レベルの少量注入であれば、ヒアルロン酸も有効な場合があります。
ヒアルロン酸注入の重大なリスク「血管閉塞」について
ヒアルロン酸注入の有名なリスクとして「血管閉塞」があります。これは、ヒアルロン酸が細い血管に入り込んでしまい、血管を詰まらせてしまう状態です。心筋梗塞や脳梗塞と同じような状態だとイメージしてください。目の周りの血管が詰まってしまった場合、以下のような事態が起こる可能性があります。
• 皮膚の壊死:皮膚を栄養している血管が詰まると、その部分の皮膚が腐ってしまう可能性があります。
• 失明:目の奥まで行く血管が詰まってしまった場合、最悪のケースとして失明に至る可能性も指摘されています。
しかし、このような重大な血管閉塞が起こる頻度は極めて稀です。10年、20年と様々な部位に注入治療を行って、その中で一人当たるか当たらないかというレベルです。これは、横断歩道を歩いていて車が突っ込んでくるのを心配するようなものだと考えています。
もちろん、リスクはゼロではありませんから、患者様には以下の異常な兆候を知っておいていただきたいです。
• 注入後もずっと痛みが続く。
• 皮膚の色が真っ白になったり、明らかに不自然な色(例えば、まだらな紫色など)に変わったりした場合。
このような兆候が見られた場合は、すぐに施術を受けたクリニックに連絡し、ヒアルロン酸溶解剤を注入するなどの適切な対処を受けることが非常に重要です。クリニック側としても、万が一の事態に備え、迅速な対処ができる体制を整えておくことが大切だと考えています。
「絶対ダメ」論に惑わされないで!大切なのは「特性の理解」
SNSやYouTubeでは「ヒアルロン酸は絶対ダメ」と否定的な意見が聞かれることもあります。これは、そう言い切った方がインパクトがあり、受けが良いという側面もあるのかもしれません。
しかし、「絶対ダメ」というわけではありません。ヒアルロン酸には確かに目の下への注入における「癖」やリスクがありますが、その特性を理解し、適切なケースで少量を用いるのであれば、有効な選択肢となり得ます。特に、手軽さや可逆性を求める方、脂肪注入が難しい方など、患者様それぞれのニーズに応じた使い方が可能です。
大切なのは、「それぞれの製剤の特性(メリット・デメリット)」を正しく理解することです。そして、ご自身の目の下の状態や、どんな仕上がりを望むのか、どの程度のリスクなら許容できるのかなどを、信頼できる医師としっかり相談し、納得した上で治療法を選択することです。
当院では、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療法をご提案できるよう、丁寧なカウンセリングを心がけています。目の下のたるみやくまにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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