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こんにちは、お茶の水美容形成クリニックの吉井 健吾です。本日は藤中 玲医師とともに眼窩内ヒアルロン酸注入のリスクについてお話します。
近年、X(旧Twitter)などのSNSで、眼窩内ヒアルロン酸注入後に失明に至ったという情報が散見され、その真偽やメカニズムについて注目が集まっています。本記事では、この眼窩内ヒアルロン酸注入がなぜ視力障害のリスクにつながるのか、そしてその代替となる治療法について解説します。
眼窩内ヒアルロン酸注入とは?なぜ上まぶたのくぼみ治療に用いられるのか
上まぶたのくぼみ治療として、ヒアルロン酸の眼窩内注入が普及しています。特に、眼輪筋(目の周りの筋肉)より奥の眼窩隔膜(がんかかくまく:眼球を覆う膜)下の眼窩脂肪(がんかしぼう:眼球の周りの脂肪組織)の層に注入する方法が注目されていました。
- 表層注入の問題点:皮膚に近い浅い層に注入すると、表情の変化に伴いヒアルロン酸が動いてボコつきやすくなることがあります。特に上まぶたは、目を閉じる際に眼輪筋が大きく動く部位です。
- 深部注入のメリット:眼輪筋より深い層に注入することで、筋肉の動きに連動しにくく、より自然な仕上がりと高い持続効果が期待できると考えられていました。眼窩隔膜や眼窩脂肪は、上まぶたのボリュームアップに寄与し、ヒアルロン酸が長期にわたって定着しやすい特性を持つためです。
眼窩内ヒアルロン酸注入で視力障害・失明のリスクが生じるメカニズム
眼窩内ヒアルロン酸注入による視力障害や失明のリスクは、注入されたヒアルロン酸が血管内に入り込み、目の栄養血管を詰まらせることで発生する可能性が指摘されています。
顔の危険なトライアングルと動脈の関係
顔には、ヒアルロン酸注入時に特に注意が必要とされる「危険なトライアングル」と呼ばれる領域があります。これは、鼻の根元から眉間、そして口角を結ぶ三角形の範囲を指し、このエリアには目の周りの血管につながる顔面動脈(がんめんどうみゃく)の分枝が多く走行しています。
この顔面動脈から派生した動脈が目の近くまで伸びており、通常は目の方に血液が流れることはありません。しかし、誤ってヒアルロン酸が動脈内に注入され、逆流するような形で目の栄養血管に達すると、血管を詰まらせる血管塞栓(けっかんそくせん)を引き起こすリスクがあります。
視力障害・失明時の回復率
一度、血管塞栓によって視力障害が生じた場合、回復は極めて困難となるケースが多いです。
- 視力が低下した場合、約7割が回復しないという報告があります。
- 完全な回復は6%、部分的な改善は25%程度にとどまります。
ヒアルロン酸溶解注射による対処も可能ですが、時間が経つと効果が期待できない場合もあります。2024年のレビューでは、フィラー(ヒアルロン酸が約80%を占める)注入後の視力障害報告が多くみられる部位として、鼻(40%)、額(27.7%)、眉間などが挙げられており、これらは顔の中心部の「危険なトライアングル」に近い部位です。眼窩内注入もこのリスクと隣り合わせにあります。
発生確率と医師の見解
血管塞栓による失明や視力障害は、約1万人に1回の発生確率と言われています。この確率を高いと捉えるか低いと捉えるかは医師によって見解が分かれる部分であり、一部の医師はリスクを考慮して眼窩内へのヒアルロン酸注入を行わない選択をしています。
安全性を高めるための対策と医師の見解
血管塞栓のリスクをゼロにすることは難しいものの、その可能性を限りなく減らすための対策は存在します。
- 浅い層への注入:血管が細かく、重篤な塞栓に至りにくい浅い層での注入にとどめることで、リスクを低減できる可能性があります。ただし、くぼみが強い場合は量が多く必要となり、ボコつきのリスクが高まります。
- 適切な針の使用:先端が丸い鈍針(カニューレ)を使用することで、血管を損傷するリスクを軽減し、血管内への誤注入を防ぎやすくなります。
- 丁寧な注入方法:注入前に吸引して抵抗がないかを確認し、ゆっくりと慎重に注入することで、血管内への逆流リスクを低減します。
- 直接目視での注入:切開を伴う手術(二重切開術や眼瞼下垂手術など)と同時に、直接目視で血管がないことを確認しながら眼窩脂肪層へヒアルロン酸を注入する方法も、血管塞栓のリスクを限りなく減らせる可能性があります。患者様にとっては手術という負担が増えることになりますが、小切開によるアプローチなど、より手軽で安全な方法も検討されています。
上まぶたのくぼみ治療における代替施術
ヒアルロン酸注入以外の、上まぶたのくぼみを改善する治療法も複数存在します。当院では患者様のご希望や状態に応じて、複数の選択肢から適切な治療法をご提案しています。
| 施術名 | 特徴 | 持続期間 | 安全性(血管塞栓リスク) | その他メリット・デメリット |
|---|---|---|---|---|
| ヒアルロン酸注入 | 手軽に注入でき、即効性がある。 | 数ヶ月~数年(種類や個人差による) | 低いが、眼窩内注入では視力障害・失明の稀なリスクあり。 | 溶解剤で修正可能。深部注入はボコつきにくいがリスク増。 |
| 脂肪注入 | ご自身の脂肪を採取し、加工して注入。 | 半永久的 | 血管塞栓による視力障害・失明のリスクはほぼないとされる。 | 生着すれば半永久的な効果。癒着の可能性がゼロではない。 |
脂肪注入
当院で多く手がけるのは、ご自身の脂肪を採取して加工し、注入する脂肪注入です。
- 血管塞栓のリスク:ヒアルロン酸注入と異なり、脂肪注入による血管塞栓で視力障害や失明が起こったという報告は、美容外科の領域ではほとんど聞かれません。これは、脂肪吸引に用いる針が太く、血管内に入り込みにくいためと考えられます。また、注入される脂肪自体も細かく加工されており、仮に血管に入ったとしても流れやすい可能性があるためです。
- 持続性と定着:注入した脂肪が定着すれば、効果は半永久的に持続します。
- 癒着の可能性:脂肪注入では、移植された脂肪が周囲組織と癒着する可能性がゼロではありません。将来的に眼窩脂肪の減量などの手術を行う際に、癒着があることで手術の難易度が上がる可能性は理論上考えられます。しかし、重篤な事態に至るケースは稀であり、機能面での視力障害リスクと比較すれば、メリットが大きいと当院では考えています。
塊での脂肪移植
近年では、ご自身のバッカルファット(頬の深い部分にある脂肪)や下まぶたの眼窩脂肪を塊で採取し、上まぶたのくぼみに移植する方法も注目されています。これは欧米で報告が増えている方法で、二重切開や眼瞼下垂手術と同時に行われることが多い、より専門的な治療です。
- 特徴:採取した脂肪を細かく砕かずにそのまま移植するため、生着率が高く、より自然で柔らかい状態を維持しやすいとされています。下まぶたのクマ取り手術で採取した脂肪を上まぶたのくぼみに利用するなど、「いいとこ取り」ができる場合もあります。
- メリット:脂肪注入と同様に、半永久的な効果が期待できます。
- 課題:患者様にとっては比較的手術のハードルが高く感じられる可能性があります。今後、日本でも徐々に普及していく可能性を秘めた治療法だと考えられます。
【当院での治療選択】患者様一人ひとりに適切な治療を
手軽に見える治療の中にも、時に重篤なリスクが潜む可能性がございます。眼窩内へのヒアルロン酸注入も、適切な選択肢となれば非常に良い結果をもたらす治療です。しかし、今回のようなリスクが取り沙汰される中、リスクを避けるために一切行わないという医師もいらっしゃいます。
当院では、ヒアルロン酸注入のリスクを十分に理解した上で、浅い層への注入に限定する、鈍針の使用、丁寧な注入手技など、安全性を最大限に高める工夫を行っております。さらに、血管塞栓のリスクが極めて低い脂肪注入や、将来的に普及が期待される脂肪移植など、患者様の上まぶたのくぼみの状態やご希望に応じて、多様な治療選択肢をご提案しております。
当院では、患者様一人ひとりの状態を丁寧に診察し、治療のメリットとリスクを十分に説明した上で、最も適切な治療法をともに検討していくことを大切にしています。上まぶたや下まぶたのくぼみでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 上まぶたのくぼみへのヒアルロン酸注入には、どのようなリスクがあるのでしょうか?
A. 上まぶたのくぼみへのヒアルロン酸注入では、注入されたヒアルロン酸が血管内に入り込み、目の栄養血管を詰まらせることで、視力障害や失明に至る可能性が指摘されています。
万が一視力障害が生じた場合、回復は極めて困難となるケースが多いとされており、報告によっては約7割が回復しないというデータもあります。このような血管塞栓による失明や視力障害は稀なケースですが、発生確率は約1万人に1回と言われています。
当院では、患者様が安心して治療を受けられるよう、メリットとリスクを丁寧にご説明し、適切な治療法をご提案しています。
Q. 当院では、上まぶたのくぼみへのヒアルロン酸注入は行っていますか?また、安全性を高めるための対策はありますか?
A. 当院では、上まぶたのくぼみへのヒアルロン酸注入のリスクを十分に理解した上で、安全性を最大限に高める工夫を行っております。
- 血管の走行を考慮し、浅い層への注入に限定する。
- 先端が丸い鈍針(カニューレ)を使用し、血管損傷リスクを軽減する。
- 注入前に吸引して抵抗がないかを確認し、ゆっくりと慎重に注入する。
これらの対策により、血管内への誤注入や逆流のリスクを低減し、安全に配慮した施術を心がけています。
Q. ヒアルロン酸注入以外に、上まぶたのくぼみを改善する治療法はありますか?
A. はい、ヒアルロン酸注入以外にも、上まぶたのくぼみを改善する治療法として「脂肪注入」や「塊での脂肪移植」があります。
脂肪注入は、ご自身の脂肪を採取・加工して注入する方法で、定着すれば半永久的な効果が期待できます。吉井 健吾統括医師が当院で多く手がける治療の一つです。
塊での脂肪移植は、ご自身のバッカルファットや下まぶたの眼窩脂肪などを塊で採取し移植する方法で、高い生着率と自然な仕上がりが期待されます。
当院では、患者様一人ひとりのくぼみの状態やご希望に応じて、多様な治療選択肢の中から適切な治療をご提案していますので、まずはお気軽にご相談ください。
Q. 脂肪注入は、ヒアルロン酸注入と比較してどのようなメリット・デメリットがありますか?
A. 脂肪注入は、ご自身の脂肪を使用するため、血管塞栓による視力障害や失明のリスクはほぼないとされる点が大きなメリットです。また、注入した脂肪が定着すれば、効果が半永久的に持続することも特徴です。
一方、デメリットとしては、ご自身の脂肪を採取する必要があるため、ヒアルロン酸注入と比較して身体への負担がやや大きくなる可能性があります。また、注入された脂肪が周囲組織と癒着する可能性がゼロではないことも考えられます。
当院では、それぞれの治療法のメリット・デメリットを丁寧に説明し、患者様にとって適切な選択肢を一緒に検討いたします。
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監修医
吉井 健吾(統括医師)/日本形成外科学会 会員 頭蓋顎顔面外科学会 会員 マイクロサージャリー学会 会員
東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院形成外科に入局。特に目の下のクマ治療については全国有数の症例数を誇り、年間平均600件執刀しています。その他、フェイスリフト、豊胸手術をはじめとした美容外科、注入やレーザー治療などの美容皮膚科も幅広く担当しています。
